平成20年度海外インターンシップレポート

平成20年度海外インターンシッププログラムに参加して

200800物質工学科 准教授 甲野裕之

今年度から専攻科学生及び専攻科進学希望学生を対象とした海外インターンシッププログラムがスタートした。第一回目の今回は引率教員3名と全国高専から選抜された11名の学生がシンガポール、マレーシア、フィリピンの各日系企業において三週間の企業研修を行うものである。
私は引率教員として、学生3名とともにシンガポールに派遣された。派遣先は、三井化学株式会社の関連会社のである三井フェノールズシンガポール株式会社。主な事業は、化学原料であるフェノール、アセトンおよびビスフェノールAの製造、販売である。日系企業とはいえ、社員は殆ど外国人であり、国際都市シンガポールを反映して中国系、マレー系、インド系、フィリピン系など多様な人種から構成されていた。コミュニケーションには当然英語が必要とされる。

200801本インターンシップの最大の特徴は教員と学生の区別無く同じプログラムを受けることにあり、引率した3名の学生と同様、私自身もビスフェノールA製造プラントのボトルネックを分析し改善提案をするという研修課題を与えられた。今まで経験したことのない巨大プラントの現場で、しかも自分の専門分野とは異なる領域の課題を与えられ、戸惑いがなかったわけではない。しかし、私よりも経験の浅い学生たちですら私と同じ状況に置かれていたのだから、私が手本となるべく姿勢を示さなければならなかったことは言うまでもない。とはいえ、学生の直接指導に加え、仕事に対する姿勢を態度で示していくことは、高専における「教育」と「研究」の両立の実践と同じことで、仕事内容に慣れればそれほど大変なことではなかった。
200802学生達も日を追うごとに現地の環境に慣れ、初めはためらいがちだった英語での会話も、徐々に増えていった。最終日には20分間の英語での成果報告を堂々と行うまでに成長していた。彼らの様子を見ていると、英語でのコミュニケーションは「英語力」というよりも「どれだけ相手に伝えたい気持ちが強いか」が鍵になっているように感じた。例え英語の成績が悪くとも、中学校、高専で英語を学習してきた諸君であれば誰でも、伝えたいという気持ちを強く持ちさえすれば、英語でのコミュニケーションは成立すると思う。だから、今回語学力を理由に海外インターンシップへの応募をためらう諸君がいるなら、それを理由にする必要はなく、今後継続される本インターンシップの応募に是非、チャレンジしてみて欲しい。
私も初めてプラントに身を置いて仕事をし、様々な発見をした。例えば、冒頭でも述べたとおり、私のいたプラントでは化学原料を生産していたのだが、敷地の殆どが副生成物の処理工程や再利用工程で占められており、教科書に出てくるような主反応はほんの一部に過ぎないということを理屈なしに理解することができた。これは、学校の中に居るだけでは得られない知識である。たった3週間の滞在でも、こうした発見が幾つもあり、書物で得た知識とは比べ物にならないほど強烈な記憶として残った。特に、私の専門分野と異なる派遣先だったからこそ、普段では得がたい経験が得られたのであり、これは、将来、学生の進路指導や自らの研究領域拡大のときに役立つだろうと考えている。
書物から得られる知識は全員に共通のものであるが、生身で得た経験は自分だけのものである。それは、自分にしかできない仕事をしていく上で、生涯にわたる財産になるだろう。私は、1人でも多くの学生にこうした財産を沢山持ち、優れた技術者、研究者となって欲しい。学生の皆さんには学校の勉強だけでなく、こうした機会に積極的になって欲しいと思っている。
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