同窓生からの便り

 

「同窓生からの便り」の新設によせて

同窓会長 栗山昌樹 (土木工学科第4期・1977年卒)
出身中学校 厚真中学校
勤務先 苫小牧市下水道部計画課

 先日、学校から苫小牧高専と卒業生の連携を目的として、「同窓生からの便り」を新設したいとの連絡を頂きました。早速、賛同させて頂く旨、ご返事させていただきましたら、光栄にも第1号の執筆をせよとご命令を受けた次第です。
この寄稿文の内容については、リクエストがありましたので、概ね、それに沿って述べさせて頂きます。

1. 現在の仕事のこと

高専を卒業と同時に、苫小牧市に採用になり現在まで約28年間、技術屋として仕事をしております。行政の技術屋の性で一つの部署にじっとして居られません。水道部に通算12年間、交通計画、道路建設を担当する都市建設部に通算14年間、後の2年間を現在の下水道部という職歴です。
さて、現在私は、4人のチームで仕事をしていますが、私ともう一人が苫小牧高専の卒業生です。付け加えるならば、8人の課の中で4人が同窓です。みんな私にとっては、頼りになる後輩達で、随分助けられております。
毎年1度、役所の技術系の同窓生で懇親会を行っておりますが、高専は全国で一つの独立行政法人になったのと同様に、懇親会では函館や旭川の卒業生も一緒に誘っております。
彼らも、喜んで来てくれます。最後には、高専の校歌を合唱します。聞くところによると、他の会社でも似たような状況らしいですが、苫小牧高専と岐阜高専で非常勤講師をされた某教授は、校舎も同じなら学生も同じだと言っていたそうです。ちょっと意味深ですが。

2. 高専時代のこと

学生時代は、5年間寮に住み剣道部に所属していました。後輩達は、五段、錬士六段、教士七段と先輩の私を差し置いて昇段し剣道の先生になっているのが沢山いますので、彼らと剣を合わせる事は避けています。つくづく、私が彼らより年上であったことに感謝していますし、彼らも私と田島先生の教育が良かったせいで、その辺は自覚しているようです。土木6期の駒形君(北広島市役所)だけが稽古を挑んできますが。
私の居た30年ほど前は、ゆとり教育とか週休2日なんてものはありませんでしたから、大変忙しい学生時代でした。学生たちは、高専の詰め込み教育を非難しておりましたが、高専は、現在流行の中高一貫教育の上を行く、高大一貫教育を40年も昔からやっている訳ですから、当然と言えば当然でありました。詰め込みが悪かというと非常に疑問です。先輩たちはそれなりに各界でリーダーとして活躍している方ばかりですから。(ただし、高専の教育が詰め込みかどうかは分かりません。)
当時は、土木でも電気工学概論や機械工学概論、電算機のハードの講義もありました。何で土木が?と思いましたが、土木では必要なんですよね。就職してから分かりました。
休日は、よく寮生でソフトボールをしました。誰かがグランドに出ると、自然と人が集まってきて、それが始まるのです。ラグビー部やサッカー部の練習試合の応援にも良く行きました。当時は、スポーツも盛んでしたから、休みには必ずどこかの部がグランドで練習や試合をしていました。事務の職員の方にも、部活の指導者がたくさんいましたので、一緒に練習したり教えを請いました。思い返すと懐かしいです。

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(5年生の遠足の写真)

3. 後輩に伝えたいこと

技術屋には、専門の知識は勿論大切ですが、専門馬鹿になってはいけません。現在問題となっているPCB、環境ホルモンに代表される微量化学物質、アスベストも然り、様々な情報手段さえ犯罪の誘因となっていること。自動車の排気ガスやフロン、技術者が産み出した成果は、一見平和利用、犯罪と無関係であるものが、問題を引き起こします。
技術とは、人間が火を使うことに始まるという学者がいますが、その起源が示すように危険性と便利さの諸刃の剣であります。
今後、自分が産み出すかもしれない成果に対し、社会に与える影響を考える力を養ってもらいたいと思います。一見、無駄と思える学生時代の勉強も、人生の中で無駄と言えるものはありません。部活も組織マネージメントを学ぶ上で重要なもので、それは社会人となってから自然に発揮される能力の一つであると言えます。私の知っている限り、社会で活躍している卒業生の大半が、熱心な部活経験者であることからも明らかであります。
時間は限られていますが、誰にも一日は24時間公平に与えられるものです。是非、有意義に使ってほしいものです。そしてバランスの良い技術屋を目指して欲しいと思います。

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(5年前期(昭和51年)2棟1階の階長時代。1階の寮生と)

4. 技術士について

これまで日本は、物を作ることで発展して来ました。今後は、知識の輸出で繁栄を維持するというのが大方の見方です。知識の輸出の上で必要となるのが技術士の資格というわけです。土木系以外はあまりメリットがないとされておりますが、今後は多くの技術分野で必要とされる時代がくるものと考えられます。
現在、技術士は約6万人いるそうですが、国ではこれを12万人にしたいという構想があるそうです。試験制度の見直しも検討されているとのことです。私は現在、上下水道部門(上水道)、建設部門(道路)、総合技術監理部門(水道、建設)に登録しています。職場の先輩が受験を勧めてくれたことと自己啓発を目的に技術士の資格に挑戦しましたが、これにより多くのことを学ぶことができたと考えています。この勉強を通じ、普段の不勉強を反省するとともに試験日という期限が設定されることで効率よく勉強することができました。
技術士2次試験の合格率は概ね15%程度ですが、総合技術監理部門は技術士2次試験に合格した後、更に受験するもので合格率は30%程度です。難しいと言われていますが、所詮は試験ですから、コツはあります。
試験に合格するためには、文章力を研くことも大切ですが、
① 普段から問題意識を持って仕事にのぞむこと。
② 数度の不合格に落胆することなく、合格するまで諦めないこと。
③ 先輩技術士の指導を仰ぐこと。
④ 勉強への投資をケチらないこと。
です。あとは、短期、長期の集中力を身に付けることも大事です。最近は、参考書もたくさん出版されていますので詳しくはそちらを参照して下さい。質問があれば、是非お問い合わせ下さい。同窓会のHPの掲示板にでも書いて下されば、回答します。
苫小牧高専の卒業生にも随分技術士が増えました。心強く思います。
技術士の良いところは、日本全国どこへ行っても技術屋と認めてもらえること、合格すると技術士会などが主催するセミナーや研修会に参加できることです。北海道では、これがなかなか盛んで広い視野を養うために利用できます。
異分野の技術士とも交流できますから、人脈を広げるのにも役立ちます。

5. おわりに

長々と書いてしまいました。在校生の皆さんには、今身近にある資源(先生や学校、仲間、先輩)を有効に使うことを勧めます。利用できるものは何でも利用してみてはどうでしょうか。新しい発見があるかも知れません。
さて、同窓会の役員を長く務めているせいで、様々な先輩や後輩の皆さんにお会いしてきました。伝説の先輩、個性豊かな人がたくさんいます。是非、同窓生の集まりには顔を出してみて下さい。何かしら人生に役立ち面白いものです。そこから人脈を広げてみてはどうでしょうか。

6. 追伸

写真は、職場を同じくする高専OBですが、本年7月に下水道汚泥の濃縮技術の開発により国土交通大臣から表彰を受けた化学26期の成田晃さんを囲んで、写したものです。

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前列左が私・栗山(土木4期生)、右が成田晃(工業化学26期生)、後列左から村井(土木8期生)、吉本(土木26期生)、宮田(土木7期生)です。