平成22年度海外インターンシップレポート
平成22年度海外インターンシッププログラムに参加して
大成建設ボスポラス海峡トンネル工事現場で研修
環境システム工学専攻 本内洋平
私は今年度で第3回目となる高専機構主催の「海外インターンシップ」に参加し、大成建設がトルコ共和国で手掛ける「マルマライプロジェクトBC1」の現場で3週間の研修を受けてきました。このインターンシップ制度は、専攻科に進学予定の5年生と専攻科生を対象としていて、今年度は全国から22名の学生が参加しました。トルコへは私を含む学生3人が派遣されました。
海外研修に際して東京で事前研修が行われました。地域・年齢・専攻もバラバラな学生と一緒に研修を受けることにより、社交性や協働性、相互理解力を養う良い機会になったと思います。レゴブロックを使った実習や英語でのプレゼンテーションなど、私の高専でもぜひ導入して欲しいと思う様な、画期的な英語の授業にも出会えました。
「マルマライプロジェクト」とは、ボスポラス海峡によってアジア側とヨーロッパ側に隔てられているイスタンブール市を、鉄道トンネルにより結ぶ計画です。大成建設JVはそのプロジェクトの肝である、ボスポラス海峡下のトンネル工事を請け負っていました。日本の建設会社が海外で大規模な事業を手掛けている事は知っていましたが、遠い外国で事業を行うという事がどれほど大変な事か、私は全然知りませんでした。国内では大きな建設会社である大成建設が、トルコでは“一見さん”だった故に沢山の壁があったといいます。初進出の国で仕事をするという事はリスクも多いですが、「足場を作る」という意味でとても大きい事だと教わりました。
研修では、第1週に工務についてトルコ人スタッフから英語にて研修を受けました。第2週と第3週は現場にてTBM工法、NATM工法によるトンネル掘削についての研修を受け、最終日に成果発表会を行いました。
トルコの公用語は英語ではなく「トルコ語」でした。そして現場で働く社員の方々は、皆トルコ語が堪能でした。しかしそれは、現地や現地に赴く前に所謂「トルコ語教室」に通ったわけではなく、現場で「体当たり」で覚えたものだそうです。一人の社員の方が、外国人とのコミュニケーションの第一歩は「コレは何?」と指を差して尋ねる事だと仰いました。まずは道具・機械の名前を単語として覚え、次第にそれが文章になってゆくのだそうです。
トルコ語で「ありがとう」は「テシェッキュレエデリム」と言います。私は、研修中に滞在していた会社の寮で朝晩の食事を作ってくれるシェフに、どうしても「ありがとう」を伝えたかったのですが、覚えたての頃は中々うまく発音できず、料理を出してもらった際についつい使い勝手のいい「サンキュー」を言ってから「しまった!」と悔しい思いをしたことが何度もありました。このままではいけないと思い、私は食事前に寮の自室でそれを何度も練習して頭に入れました。それは正に、テストのための外国語の習得ではなく、「実用のための習得」でした。そして、食器を下げる際にシェフに「テシェッキュレエデリム」と言うと、彼はとてもにこやかな顔で私の食器を受け取ってくれました。使うからこそ外国語は習得できる、そう強く感じた瞬間でした。
共にトルコで研修生活を送った、2人の専攻科生の先輩にはとても助けられました。私が一番年下ということで、少なからず先輩たちに甘えてしまった部分がありましたが、先輩たちは快く胸を貸してくれました。また先輩たちは英語力も工学の知識も私よりもずっと豊富で、1、2年後の自分の目標像となった2人から受けた刺激は計り知れません。「井の中の蛙大海を知らず」ということわざがありますが、学年も地域も専攻をも越えて交流が図れるこの研修は、地元高専で学生生活を送っていたのでは気づけなかったであろう事にたくさん気づかされました。
またこの研修では、私が5年間の授業で習ったことが実際の現場で沢山使われていることに驚かされました。「なるほど、ここでこれが使われているのか!」と手を打つことがしばしばありました。自分が勉強していることが将来にどう繋がるのかを分からないまま、ただテストのために受けていた授業と、研修から帰ってきて受ける授業とでは、自分の勉強に対する姿勢が明らかに違っていました。海外研修に参加しこの点に気づけたことは大きかったと思います。
専攻科進学を考えている学生は、ぜひこの制度を利用すべきだと思います。この海外インターンシップが来年以降も続き、多くの企業に学生を派遣し続け、将来的には必修単位として認定されるようになることを望みます。
最後に、私たち研修生を受け入れてくださった大成建設の社員の方々、そして私を選出して下さった高専機構、苫小牧高専の関係者の方々、この研修の企画運営に携わられた沢山の皆様、一緒にトルコで研修を受けた先輩2人に厚く御礼を申し上げたいと思います。この海外研修に参加できたことは、私の人生において大きな宝物になったと思います。